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「青い苺」PVに見る、女児アニメにおける女の子同士の関係

こちらの動画をご覧ください。 


「アイカツ!フォトonステージ!!」オリジナル新曲「青い苺」プロモーションムービー

 

これはアイカツ!フォトonステージ!というアプリゲームの楽曲「青い苺」のPVです。
このゲームはアニメ・データカードダスの「アイカツ!」が元になっており、ゲーム内のシナリオはアニメのサイドストーリーや後日談という位置づけのようです。

PVで中心になっている二人のうち金髪の方が「星宮いちご」、アニメでは2年目まで主人公であったアイドルの少女です。青髪の方が「霧矢あおい」といい、いちごの親友で彼女自身もいちごと一緒にアイドルになり活躍を続けています。
 先ほど紹介した「青い苺」はこの二人が歌っています。
さて、このPVの何がポイントかと言うと。
 
どう見てもいちごとあおいが結婚しています。
 
いや、本来なら同性婚をことさら騒ぎ立てる方が差別的といえばそのとおりなのですが、実際世間の風潮を考えれば驚きます。 
しかし実際、女児アニメなんて言い方をされますが、ターゲットが女の子のアニメにおいてしばしば(結婚までするかはともかく)魅力的な女の子同士の関係が描かれます。 アイカツ!を例に、女児アニメで描かれる女の子同士の関係の魅力を考えていきます。 普段は百合だ百合だと言っているのですがここでは一般論として考えます。 
以降、アイカツ!アニメのネタバレあります*1

 

 長い期間をかけて、丁寧に描かれる関係 

女児アニメは長いです。「アイカツ!」は30分アニメで全178話+劇場版2本(と夏に公開される現行シリーズ「アイカツスターズ!」映画と同時上映)であり、3年半続いたシリーズです。
3年目以降は主人公が大空あかりにバトンタッチしていちご達の出番は少なくなりますが、その分を除いても100話と劇場版1本はいちご達メインのストーリーがあります。 
このたくさんのストーリーの中でキャラクターそれぞれの掘り下げはもちろん、キャラクター同士の関係性、さらにその関係性の変化が時間をかけて語られます。
このディテールの詳細さがアイカツ!他女児アニメにおける人間関係の魅力でしょう。 

恋愛に負けない、少女同士の関係 

いちごとあおいの二人はアニメでも特に繋がりの強い二人として描かれています。
しかしこの二人の関係は名付けがたい関係です。「友情」のカテゴリには入るでしょうが、では「恋愛」には入るか?(友情と恋愛は両立し得ます)というと意見は分かれると思います。
友情がベースであること、そして他の誰とも異なる特別な関係ではあるということはわかりますが、はっきりとしたカテゴライズは難しい関係です。
そして、この二人の関係は尊いものだと描かれていることが重要です。
漫画・アニメにおいて、女同士の友情やそれに近い感情で結びついた関係は、(主に男女の)恋愛に対して軽く描かれがちな傾向があると思います(男同士については、例えば「少年漫画」のイメージとして努力・友情・勝利の「友情」は主に男同士の関係と考えられますが、「少女漫画」のイメージはキラキラした恋愛で、女同士の友情がイメージされることは少ないのではないでしょうか?)。 
 
しかしアイカツ!ではそんなことはありません。 例えばいちご達の通うスターライト学園の学園長・光石織姫といちごの母親・星宮りんご。この二人は今では伝説となったアイドルユニット「マスカレード」をかつて組んでいました。
アニメ1年目ラスト間近で復活し、ぶっつけ本番ながら息の合った見事なステージを見せてくれます。登場する時間は多くないですが、この二人の間に見えるお互いへの信頼は強く印象に残ります。
りんごは当然既婚者で、今も夫の太一との結婚生活は続いています(太一は仕事の関係で家にはほとんどいませんが)。でも、本編を見た上でりんごと織姫の絆がりんごと太一の絆より弱いと思うファンはいないでしょう。 
アイカツ!ではこの例の他にもたくさん、女の子同士の関係の強さが描かれています。その背景には、女性アイドルが活躍するアニメということで中心として描かれるのはアイドルなので、当然作中の人間関係の中心は女の子同士になるということがあります。その上でドラマを魅力的にするためには、女の子同士の関係を魅力的に描く必要があるということです。
もちろん女の子同士が人間関係の中心になるのはアイドルものには限りません(例えばプリキュアシリーズならプリキュアになれるのは女の子だけなのでやはり女の子同士の関係が描かれます)。 

「青い苺」で示された、「いちごとあおい」の関係 

翻って「青い苺」で歌われるいちごとあおいの関係について考えてみます。
いちごとあおいもマスカレードの二人にも負けないくらい深い絆を持つ二人として描かれています*2。 
ゲーム内で「青い苺」が使われるのは結婚をテーマとしたイベントです。一方、歌詞はいちごとあおいの今までアニメでも描かれた思い出が散りばめられており、二人のことを歌った歌といえます。また歌詞は、「永遠の果実」と歌われているように*3二人の関係が永遠だということも示しています。さらにPVでは二人がウエディングドレスを身にまとっています。
ここまで重なれば、この曲のモチーフに「いちごとあおいの結婚」があると考えるのは不自然ではないでしょう。 
 
実際のところアイカツ!は恋愛がテーマのアニメではないですし、セクシャリティまでは設定されていません(少なくとも表向きには)*4。そのためいちごとあおいが恋愛の関係になりうるかは推測はできても正しい答えはありません。
そして基本的に「結婚」は恋愛の延長にあるとされています。だから「このままいけばいちごとあおいが結婚するだろう」といったことは言い切れません(法制度の話は置いておきます)。 
 
では、結婚を示唆するPVは何を意味するのでしょうか*5。私は、先ほど書いたセクシャリティが云々のような理屈を飛び越えたメッセージが込められているのではないかと考えます。
二人が恋愛かどうか?そんなことは関係ない。この二人の関係は「いちごとあおい」の関係だ。
いちごとあおいは二人でいることで幸せになれる。
いちごとあおいの絆の強さはこれからも、何があっても失われることはない。 
 
「青い苺」のPVは、今まで積み重ねられた二人の経験を思い出し、そしてその経験による絆の強さを示してくれる感動的な映像といえるでしょう*6。 
 
最初の二人であるいちごとあおいを中心に考えてきましたが、アイカツ!には他にもたくさん魅力的なアイドルたちの組み合わせがあります。 
例えばアイドルとプロデューサーという立場で、常に相手のことを考えてしまう姿が微笑ましい音城セイラと冴草きい。
例えば生まれたときからの幼馴染で、アイドルになってからもいつも一緒にいる、それでいて恋人のような距離感の大地ののと白樺リサ。
いや、二人組だけに限りません。いちごとあおいには同じユニットのメンバーである紫吹蘭もいます。 
 
そして、女の子同士の関係にフィーチャーして語ってきましたが、もちろんそれだけではありません。アイカツ!は熱いスポ根としても芸能界ものとしても確かな面白さを持った作品です。
アイカツ!」、それを受け継ぐ現行の「アイカツスターズ!」、さらにはそれぞれ際立った個性を持つ女児アニメに触れてみてはいかがでしょうか?

*1:でもこれから見る人ってどれくらいネタバレ回避できるのかな

*2:Wake up my musicも二人で歌ってるし

*3:作詞は監督の木村隆一さんです

*4:当然「設定されていない」イコール異性愛者だろうということにはなりません。でもまあそういう思い違いする層はこんなブログ見ないだろうなあ

*5:まあここで公式はセクシャリティに踏み込んだ、いちごとあおいは女同士で恋愛しているという主張もできるのですが、今回の本筋とはずれるので言わないことにします

*6:そこは私がいちあおを「百合」として魅力を感じるポイントでもあります